畳は日本の伝統的な床材として長く愛されてきましたが、その美しさと機能性を維持するためには適切なケアが欠かせません。その中でも「畳の裏返し」は、畳のライフサイクルを延ばし、快適な和室環境を維持するための重要な作業です。この記事では、畳の裏返しについて詳しく解説し、その意義や方法、そして注意点をご紹介します。
1. 畳の裏返しとは?その意義と効果
畳の裏返しとは、文字通り畳を裏返して使用することです。しかし、これは単純に畳をひっくり返して裏と表を入れ替える事ではありません。畳の構造や特性を理解することで、裏返しの真の意義が見えてきます。
1.1 畳の構造と裏返しの仕組み
畳は主に以下の部分で構成されています:
- 畳表(たたみおもて):表面の部分
畳おもて
- 畳床(たたみどこ):畳の中心部分
畳床 建材床
- 畳縁(たたみべり):畳の周囲を覆う部分
畳へり
裏返しとは

まず畳おもてと畳ヘリを外します
畳縁を外す
畳おもてと畳床をはがします
畳おもてをはがします
はがした畳おもてを裏面を上にして縫い付けます。畳縁は取り外して新しい畳縁に付け直します。
畳裏返しの作業
現状付いている古い畳おもてから新しい畳おもてに替える作業が表替えです
畳おもて替え
作業によっての畳の色を比べてみるとこうなります
畳表替えと裏返しの色の違い
1.2 裏返しの意義と効果
- 使用面積の拡大: 畳の裏表両面を使用できるため、畳の寿命が約2倍に延びます。
- コスト削減: 表替えに比べて費用を抑えられます。
- 畳床の乾燥: 裏返し作業をすることで畳床の乾燥を促し、結果としてカビの増殖を防ぎます。
- 凹み・隙間の解消: 長年の使用で生じた凹み・隙間を修繕によって軽減できます。
- 畳床の強度維持: 定期的な裏返しでメンテナンスすることで畳床の強度低下を防ぎます。
2. いつ畳の裏返しをすべきか?タイミングと判断基準
畳の裏返しは、適切なタイミングで行うことが重要です。以下に、裏返しを検討すべき時期と判断基準をご紹介します。
2.1 一般的な裏返しの目安
- 使用頻度が高い場合: 3〜5年程度
- 使用頻度が低い場合: 5〜7年程度
ただし、これはあくまで目安であり、実際の畳の状態や使用環境によって異なります。
2.2 裏返しを検討すべき畳の状態
- 表面の摩耗: 畳表の艶がなくなり、ごわごわした感触になってきた場合
- 部分的な変色: 日光や使用によって部分的に色が変わってきた場合
- 軽度の凹み: 家具の跡や歩行による軽い凹みが見られる場合
- におい: カビ臭さなど匂いが強くなってきた場合
2.3 裏返しではなく表替えや新調を検討すべき状況
- 畳床の劣化: 歩いた時の足触りが悪く、ベコベコしている場合
- 深刻な凹み: 畳床まで影響が及んでいる腐りや深い凹みがある場合
- カビや虫の被害: 目に見えるカビや虫食いの跡がある場合
- 過度の摩耗: 畳表に穴が空いていたり極端に薄くなっている場合
これらの状況では、畳専門店に相談し、適切な対処方法を選択することをおすすめします。
3. 畳の裏返しの手順と注意点
畳の裏返しは、専門的な知識と技術が必要な作業です。ここでは、一般的な手順と注意点をご紹介しますが、実際の作業は畳専門店に依頼することをおすすめします。
3.1 裏返しの基本手順
- 畳の取り外し: 畳を部屋から慎重に取り出します。
- 畳縁の取り外し: 畳縁を丁寧に取り外します。
畳縁を外す
- 畳表と畳床の裏返し: 畳表と畳床をはがしてその畳表を裏返します。
畳おもてをはがします
- 畳縁の取り付け: 新しい畳へりを縫い付けます。
- 畳の戻し入れ: 裏返した畳を元の位置に戻します。
3.2 裏返し作業の注意点
- 畳の重量: 畳は素材によって重いため、無理に持ち上げないようにしましょう。
- 畳縁の取り扱い: 畳縁は慎重に取り扱い、損傷しないよう注意します。
- 畳床の状態確認: 裏返しの際に畳床の状態をよく確認し、必要に応じて補修します。
- 湿気対策: 裏返した後は十分に乾燥させ、湿気を取り除きます。
- 専門的な判断: 畳の状態によっては裏返しが適さない場合もあるため、専門家の意見を聞くことが重要です。
3.3 裏返し後のケア
- 乾燥: 裏返し直後は十分に換気し、畳を乾燥させます。
- 清掃: 畳表面を丁寧に掃除し、畳表面のケアを始めます。
- 定期的なメンテナンス: 日々の清掃と定期的な点検を継続します。
4. 畳の裏返しと表替えの違い
畳のメンテナンス方法として、裏返しと表替えがありますが、それぞれに特徴があります。状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。
4.1 裏返しの特徴
- コスト: 表替えに比べて安価です。
- 作業時間: 比較的短時間で完了します。
- 効果: 凹みの軽減や畳床の乾燥に効果があります。
畳裏返しの作業
- 適用範囲: 畳床が健全な場合に適しています。
4.2 表替えの特徴
- コスト: 裏返しより高価ですが、新品の畳表を使用します。
- 作業時間: 裏返しよりも時間がかかります。
- 効果: 完全に新しい畳表面を得られます。
畳おもて替え
- 適用範囲: 畳表の劣化が進んでいる場合や、新しい畳表の風合いを求める場合に適しています。
4.3 選択の基準
- 畳の状態: 畳床の状態が良好であれば裏返し、畳表の劣化が進んでいれば表替えを検討します。
- 予算: 予算に応じて選択します。
- 好み: 新しい畳表の風合いを求める場合は表替えを選びます。
畳表替えと裏返しの色の違い
- 使用環境: 頻繁に使用する場所では表替えを検討します。
5. まとめ:畳の裏返しで快適な和室ライフを
畳の裏返しは、費用を抑えて、畳の寿命を延ばし、快適な和室環境を維持するための効果的な方法です。適切なタイミングで裏返しを行うことで、以下のメリットが得られます:
- 畳の使用期間の延長
- コストの削減
- 畳床の健康維持
- 和室の美観と快適性の向上
ただし、畳の状態によっては裏返しよりも表替えや新調が適している場合もあります。畳の状態を定期的にチェックし、必要に応じて畳専門店に相談することをおすすめします。
日本の伝統的な住文化の象徴である畳。適切なケアと管理を行うことで、その魅力と機能性を長く楽しむことができます。畳の裏返しを含む適切なメンテナンスを行い、快適で心地よい和室ライフを楽しみましょう。